45.目に見えない物10選
世界では目では見えない多くのことが起こっています。今この瞬間にも私達の目の前で見えない何かが生まれ、見えない何かがぶつかり合い、形を変え死んでいます。今回は、そんな人の目では見えない物の世界を、少し覗いてみましょう。
空気
人が生きるために必要不可欠な空気は、目には見えません。考えると不思議な気もしますね、空気は主に、窒素と酸素でできています。分子の大きさは0.357ナノメートル程。人間が肉眼で見えるのは、およそ0.1ミリメートルまでですから、どんなに頑張っても、窒素や酸素を見ることはできません。しかし、ある特定の分子は、沢山集めると肉眼でも見えます。浄水場で殺菌に使われている塩素は集めると、黄緑色に見えます。また、窒素はおよそマイナス196度で液体になり、その状態なら目で見ることができます。液体窒素は優秀な冷却材として、医療や食品製造などで使われています。
原子
原子は、部室を構成する最小単位です。宇宙のありとあらゆるもの、固体、液体、気体は、数え切れない原子でできています。原子の大きさは、大体0.1ナノメートルです。0.1ナノメートルの原子を百万倍大きくすると、0.1ミリメートルの点になります。0.1ミリの点になって、ようやく私達は肉眼で見ることができます。
理科室にある光学顕微鏡の分解能は200ナノメートルまでなので、原子は見られません。電子顕微鏡の分解能は0.1ナノメートル以下なので、原子を見ることができます。
ゾウリムシ
ゾウリムシは、自力で動き、食べ、繁殖する単細胞生物です。長さは、50~330マイクロメートル程で、靴底のような形をしています。円筒形の身体には、数千の繊毛が生えていて、その毛を使って池や沼を泳ぎます。普通、観察するには顕微鏡が必要です。
しかし、大きい固体なら細い髪の毛くらいありますし、同じ単細胞生物のアメーバみたいに、形がころころ変わったりもしません。非常に目が良くて、集中力と忍耐力を持つ人なら、公園や田んぼで、ゾウリムシが蠢くのが、見えるかもしれませんね。
回転する物体
私たちは、車輪のスポークや扇風機の羽が見えます。でも、車輪や扇風機が回り出すと、スポークや羽の一つひとつは見分けられなくなります。これは、人の目が一定の間隔で世界を見ているためです。つまり、私たちは、目の前のすべての動きを見ているのではなく、きれぎれの画像をつなぎ合わせて見ているのです。そのため、スポークや羽の動きを追うことができず、回っているはずの物が止まって見えたり、逆向きに回って見えることもあります。このことを、ストロボ効果、止まったり逆向きに見えることを、特にワゴンホイール効果と呼びます。
ガンマ線
ガンマ線、電波、紫外線、赤外線、エックス線、マイクロ波、これらは全て電磁波で、波長に寄って区別されています。私たちの目に見える光、これも電磁波の一種で、可視光線と呼びます。可視光線は大体、400~700ナノメートルの範囲で波長を持っていて、波長の違いが色の違いになります。波長の短い光は青く、長い光は赤く見えます。可視光線を除く全ての電磁波は人は見ることができません。放射線の一つ、ガンマ線は波長が最も短い電磁波です。原子核が崩壊する時、光が放出されます。これがガンマ線です。ガンマ線に長時間当たり続けると、身体の細胞は変化し、破壊されます。細胞の変化によって起こる病気が癌です。
電波
電波は最も波長が長い電磁波です。他の電磁波と同じく、電波も光の速さで移動しています。電波は発振機と受信機を使って、送ったり受け取ったりすることができます。この特質のお陰で、衛生やネットやラジオを使い、データを送受信して便利な生活を送っています。もしも電波が見える光だったら、私たちの周りには、色の付いた何かであふれることになり、うるさいよー!と叫んでパソコンを叩き壊さずにはいられないでしょう。
紫外線
紫外線は紫色の外の光線、つまり可視光線より短い波長を持つ電磁波です。太陽から大量の紫外線が放射されていることはご存知でしょう。しかし、太陽光線の内、紫外線はたった10%です。そして、その内三分の一だけが大気を通って地表に到着します。有害な紫外線に当たる事で、身体に起こる変化が日焼けです。紫外線が皮膚に当たると皮膚はメラニンを作ります。メラニンは紫外線を吸収し、細胞が破壊されるのを防ごうとします。生き物の中には紫外線を利用するものもいます。蝶はつがいになる相手の健康を紫外線で見分けます。トナカイは食糧の苔を紫外線で見つけます。多くの植物の花びらは、紫外線を反射しますが、それは蝶や蜂といった、紫外線を認識できる昆虫に位置を知らせて、花粉を運んでもらうためだと考えられています。
赤外線
赤外線は赤色の外の光線、つまり可視光線より長い波長を持つ電磁波です。太陽の光を浴びた時、キャンプファイヤーの炎に当たった時、私たちは温かいと感じます。それは、赤外線を浴びているためです。地表に到着する太陽光の半分が赤外線です。赤外線カメラの映像は、プレデターのような映画でおなじみです。ある生き物は、高価なカメラを付けなくても、赤外線を見ることができます。ガラガラヘビなどのヘビは、獲物を見分けるために赤外線を利用します。ピラニアや金魚のような魚は、赤外線を使って濁った水の中を泳ぐことができます。蚊は赤外線を使って、一番美味しい血がある場所を見分けます。
ブラックホール
ブラックホールはとてつもなく大きな質量を持つ天体を指します。強い引力で周囲のあらゆる物体を引き寄せて飲み込み、その力からは光も逃れる事ができません。光が出てこられないのですから、私たちの目で見ることは不可能です。ブラックホールの大きさは様々だといいます。原子ぐらい小さなブラックホールもあります。そんなに小さくても、質量は地球上の山と同じくらいです。私たちの銀河系に、いて座A*という超大質量ブラックホールがあります。その質量は、太陽の四百万倍で、地球数百万個を飲み込むことができます。
ダークマター
宇宙を観察していると、それぞれの星が引力によって影響しあい、近づいたり遠ざかったりしているのが分かります。しかし時には、引力で説明できないほど速く移動する星や銀河が見つかります。星や銀河を引っ張っている何かがあるべきなのに、その何かは見えません。科学者たちはその見えない何かを、ダークマターと名付けました。ダークマターは、光やエネルギーを放射しないので目には見えません。しかし、見えている星の動きを計算することで、見えないダークマターの存在が確認できます。宇宙のおよそ八割がダークマターと考えられます。